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「針ノ木雪渓に入り浸り」(「ビスタリ山ある記(28)」)

今安曇野は田植えまっさかり。

遅咲きの桜、ハナミズキ、菜の花などとりどりの色の花が白い山と青い空に映えています。安曇野が一番輝く時期です。今の安曇野はめまいがしそうな連休の混雑がなくなってゆったりと自然を楽しむことができます。

私はこのところすっかり針ノ木雪渓に入り浸りです。
・4月18日 講習の下見で針ノ木峠まで(スキー センターブログで紹介)
・4月28日 針ノ木雪渓2,100mまで(スキー)
・5月2日 赤沢岳屏風尾根
取り付きは大沢小屋の手前を右に回り込んだところ。稜線までの標高差は800mほど。最初は急な樹林帯。途中から視界が開けます。2200mのコルを過ぎるとルートの核心部、急な雪壁が連続します。登り切ると赤沢岳北側の稜線に出ます。
・5月7日 大沢小屋周辺で山岳会新人の雪上訓練
・5月11・12日 大沢小屋周辺に幕営して、長野県山岳協会の合同雪上訓練。

この先もセンターの残雪期講習は針ノ木岳が中心です。今月一杯くらいまではスキーも出来ます。
針ノ木雪渓の魅力は、なんといってもアプローチが短いこと。黒部ダムの入り口扇沢から歩いて1時間半ほどで大沢小屋。小屋はこの時期営業していませんが、雪崩の危険がある本流を避けて絶好の幕営場所です。ここから針ノ木峠までは3時間半ほど。雪上訓練、スキー、針ノ木峠の登攀など色々に楽しめます。但し天気を見ながらきちんと準備して出かけることが条件です。


↑大沢小屋  4月18日
大沢小屋は、黒部ダムに入る“立山黒部アルペンルート”の扇沢駅から、歩いて1時間ほど。この時期は夏道でなく雪に埋まった篭川谷に沿って入ります。日本で最初に山案内人組合を作った、百瀬慎太郎が建てて今は孫の百瀬堯(たかし)さんが経営しています。

 

↑雪のブロック 4月18日
この時期になると、気温が上がり雪庇や木に引っかかった雪が自然に崩れます。崩れた雪は途中の雪を巻き込んで大きな雪崩になることがあります。

↑自然発生雪崩(動画) 4月18日
針ノ木雪渓上部、右岸から自然発生雪崩が出ていました。冬期の新雪雪崩は、人が誘発することが多いのですが、この時の雪崩は気温が上がって雪のブロックが崩れたり、埋まっていた木の枝が跳ね上がったりした衝撃で前日降った雪が雪崩れたものです。前日降った雪の量がそれほど多くなかったことと、本流の傾斜がそれほど強くなかったことでそれほど大きな雪崩になりませんでした。

↑赤沢から出た雪崩 5月2日
大沢小屋の少し下で、針ノ木雪渓と赤沢が合流します。赤沢は屏風尾根と鳴沢尾根に挟まれた大きな沢で、毎年巨大な雪崩が本流に押し出してきます。4月28・29日に講習をやったときは無かったのに、前日雨が降って沢の上部で重くなった雪が沢を半分埋める大きなデブリを作りました。

↑屏風尾根の登攀 5月2日
下部は樹林の急斜面を登りますが、1時間ほどで傾斜が落ち樹林も薄くなります。景色も開けて快適なところです。

↑屏風尾根から針ノ木雪渓を望む 5月2日
前日の雨で針ノ木雪渓本流には両側からいくつも雪崩が出ています。一番低く見えるところが針ノ木峠です。

↑屏風尾根の登攀2 5月2日
上部の急な雪壁が連続する核心部に差し掛かりました。気温が上がって緩んだ雪にキックステップが小気味よく決まります。

↑長野県山岳協会合同訓練 5月12日
前日練習した雪上歩行の仕上げで、針ノ木峠まで登ります。雪が堅いうちに登ろうと4時半に出発。後ろに見えているのは爺ケ岳南峰です。夏の爺ケ岳登山道は見えている斜面をトラバースしていますが、この時期は右の尾根通しに登ります。

↑針ノ木峠 5月12日
針ノ木峠の標高は2,536m。正面岩山の裏に針ノ木岳があります。夏道は岩山を越えていきますが、この時期は急で岩混じりの雪壁をトラバースする箇所があってアイゼン歩行がしっかりできる人しか登れません。

↑針ノ木峠から針ノ木雪渓を望む 5月12日
針ノ木雪渓は、マヤクボ沢出合から上は35度くらいの急傾斜になります。登りも緊張しますが、下りはもっと大変です。この時も、峠から50mほどはロープにつかまって後ろ向きに降りる人がいました。

↑若い! 5月12日
長野県山岳協会の合同訓練に、信州大学医学部山岳会の皆さんが参加しました。雪山初めてという人もいましたが、全員無事に峠まで登りました。全員私の1/3以下の年齢です。

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